歩いていた足を踏切の前で止めた。
バーが下がって、とうせんぼされる。

ぎゅっと、硬く目を瞑った。
ケータイを握る手に、力が入る。



「わ、私にすれば?」



目の前を、大きな音を立てて電車が通った。

まだ、まだ終わらない騒音。


やっと、周りの音が聞こえる様になった時
握り締めたケータイから聞こえた声はいつも通りで、
私の知ってる彼の声で・・・


やっぱり、心臓がぎゅーっとなる。

安心する、大好きな声。

私を呼ぶ声。




「ごめん、聞こえなかった。何?」




笑い声も、不機嫌な声も、眠そうな声も、寝起きのかすれた声も

優しく笑う所とか、ご飯をおいしそうに食べる所とか

相談に乗ってくれたり、叱ってくれたり、心配してくれたり



くだらない事で立ち止まる私を
その大きな体で包んでくれているみたいで