「ここ座っていいですか?」


私の前の席を指差す


「いいよー」


私がそう言って、けんくんは椅子を私側に向けて私と対面する形をとる

私は終わらないレポートに格闘したまま



「なにやってるんですか?」

「家庭科のレポート。期日忘れちゃって、今日中にやらなきゃ評定1にするって脅されちゃって」

「…大変ですね」

「まぁ私が悪いんだけどねーははっー」



今度から期日はちゃんと守ろう…

もう居残りは眠たくなるし
何より脅されるのは嫌。








「………」

「………」


カッカッカッ



「……」


シーンとした教室の中、私のシャープペンの音だけが響く


けんくんは私の邪魔をしないためか静かに黙ってくれてるし


けれど何でけんくんが教室に来たのか分からない

もしかして私と一緒に帰ろうとした?
だから私が終わるのを待ってくれてるのかな?



「けんくん、まだ時間かかると思うから帰っていいよ?」

「いや、ゆいか先輩のレポートが終わるまで待ってます」

「でも…」

「待ってます」


い、意外と頑固なのね


何度言ったって帰ると言いそうにないし、私が折れるしかないじゃないか


「…じゃあ帰りたくなったら帰っていいからね」

「大丈夫です」



それだけ言うとまた黙って空を見る


忠犬かと思ったら、変なとこは頑固なんだね

私のためなのか自分の意志なのかよくわからないや