seven kisses

彼女は何か言いかけていたけど、もう何も話したくなかった。

話してもムダだと思った。

悔しそうな顔をしたマネージャーを置き去りにして、私はその場を去った。



そういう事だったのか.......

確かに、敬志の過去にどんなことがあったか、私は知らない。

でも、もう心は決まっている。

私は敬志を信じるだけ。

敬志はいつも、自分より人の事を先に考える。

いたずらに人を傷つけたりしない。

だから、やましいことなんてあるはずがない。



そうは思っても、気持ちの昂ぶりを抑えることができない。

信じていても、長い間、敬志のそばにいたというだけで、あの子に嫉妬してしまう。

大丈夫だから.......

自分に言い聞かせながら、泣きたいのを我慢する。



とにかく、気持ちを落ち着かせよう。

あの子の顔が見えないところに行きたい。

ただその一心で、私は土手を登り始めていた。