「もう、大丈夫? 落ち着いた?」

「あぁ、うん。」

「なら、良かった。」

「何かスッキリしちゃった。ありがとう。」

「どうだった? その後、契約取れた?」

「それはダメだった。」

「そっか。」

「いいよ。明日頑張るから。」

「ねぇ.......じゃあさ、美希さん、俺と契約しない?」

「 何の?」



彼は悪戯っぽく微笑むと、私の真正面に立った。

そして、真っ直ぐ目を合わせ、今度は真剣な表情でゆっくりと語りかけた。



「美希さん、今度の土曜日、俺と一緒に過ごしてくれませんか?」

「..........。」



え?

なんで? どうして?

ちょっと、嘘でしょ.............



彼の言葉に、一瞬、心臓が止まった気がした。

だって、今度の土曜日は私の29歳の誕生日だ。

もしかして、知ってて言ってる?

そんな訳ないよね?

これは偶然..........なんだよね?



私を見つめる目があんまり優しいから、勘違いしてしまいそうになる。

気付けば、もうドキドキが止まらなくなっている。