seven kisses

拓巳先輩は、スタジアムを出ようとしている所だった。

声をかけていいのか迷うくらい、寂しそうな背中だ。



それでも勇気を出して、スタジアムの外の人影のない場所にある柱の影に、隠れるようにもたれかかる先輩に近付いて行った。

すると、落胆した様子で宙を見つめていた先輩は、私に気付いた瞬間、黙ったまま、すがるように抱きしめた。



即座に心臓がドクンと音を立てたけど、先輩のやり切れない気持ちを思ったら、それは不思議とすぐに鎮まって、私も自然と先輩の背中に手を回していた。

多分、ドキドキとか、そんな感情より、とにかく先輩の辛さを静かに受け止めてあげたかったから。

わかってあげたい、支えてあげたい、慰めてあげたい..........

そう思ったから。