中学3年生、春
私に衝撃的なことが
起こった。
いつものように
楽器屋さんのレッスンルームを借りて一人で
ギターを弾いていた。
当時、ギターの神と言われていた乃絵流(ノエル)さんにはまっていて
乃絵流さんの曲ばかり弾いていた。
-コンコン-
「ん?誰?」
誰かがレッスンルームのドアをノックした。
「はーい」
ドアを開けたら、知らない30代の男性がいた。
…誰?
「はじめまして。」
「…どうも」
「君はよくここのレッスンルームを借りてる子やね?」
「はい…」
「ちょっとでええから、ギター弾いてくれへんか?」
え、何こいつ。
いきなり…
「えっと…何を弾けば…」
戸惑いが隠せなかった。
「君の得意な曲でええよ」
男性は笑顔で言った。
「じゃあ…乃絵流さんの「紅色」を弾きます」
私は一番得意な乃絵流さんの
紅色を弾きはじめた。
人前で弾くのは馴れていた。
友達の前ではしょっちゅう
弾いてたから
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弾き終わり、男性のほうを見た。
その男性は前から聞いていたみたいな顔で
頷いた。
「うん、君はギターの腕前は最高やね」
「ありがとうございます…」
「おじさんとちょっと来てくれや」
私は腕を引っ張られながら
レッスンルームを出た。