「大東君がこっち見たよ♪」



「キャっ。マジかっこよすぎっ」



「今日は絶対アドレス教えてもらおうっと」



大東君の視線に、手を振って騒ぐ女の子たち。



「……はぁ」



それを見ながら、大東君は肩を落とすようにして、深いため息をついた。



「俺、苦手なんだよね……ああいうの。ただ疲れるだけ」



女の子たちは、大東君が教室から出てくるのを、今か今かと待ち構えている。



「モテるもんね。大東君」



大東君は、あたしの言葉に、



「知らないんだよ。俺のことなんか何もさ……。それなのによく分からない……俺なんかのどこがいいのか……」



吐き捨てるようにそう言った。



「……あたしも、それ、少し分かる気がするなぁ。」



「彩城さんも?」



好きって言われるたびに、“なんで??”って疑問に思う。



女の子はいっぱいいるのに、どうしてあたしなの??って。



その気持ちに似ている気がしたから。



「そう言えばさ、彩城さん、男子にすごく人気あって、よく告白されてるって聞いたことあるなぁ」



「なんて言えばいいかなぁ……。なんで、あたしなんかのことを、好きって言うんだろうって……」



「俺は、彩城さんを好きになる男は、見る目あるなと思うけどなっ」



大東君は、冗談ぽく、あたしにそう言い終わると、



「一緒に教室出ると、彩城さんに迷惑かけそうだから、俺が先に出るね。じゃあ、また明日」



もう一度深くため息をついてから、教室から出て行った。