「ねぇ、優星君ってばぁ!! 彩夏の話、聞いてる??」



あたしの席まで漂ってくるその子の香水の香り。



「ん?? 彼女?? いないよ」



女の子の問いかけに、興味なさそうに答える大東君。



「じゃあ、彩夏、立候補しちゃおうっと♪ いいよね??」



「別に……かまわないけど」



「うんっ♪ 彩夏、頑張るねっ。また来ていいよね??」



「……ご自由に」



笑顔の女の子と、まったく表情を変えることのない大東君。



「またね~~♪ 優星君」



休み時間の終わりを告げるチャイムとともに、



女の子は自分の教室へ戻っていった。



教室を出る時に手を振っていたけど、それさえ大東君は気づくことなかった。



そんな大東君の横顔を見ていたら、



「あ、彩城さん、世界史のレポートってさ、いつまでに提出だっけ? 俺、まだ書いてないんだよね」



何事もなかったかのように、あたしに話しかけてきた。