「優君、もうこれ以上いたら大変かもよ」



廊下はもうパニック寸前。



黒崎先生も困ってるみたい。



でも、見上げた優君は全然焦ってもいなくて、



むしろ微笑んでいるようにも見える。



「ん?? そうだな……じゃあ、行こっか??」



優君の言葉にあたしも頷いて、



「それじゃあ、黒崎先生、あたしたちは、ここで失礼します」



黒崎先生に挨拶をした。



「おう!! 幸せになれよ。ほらっ、お前たち、これじゃあ通れないだろう?? 通してやれって」



黒崎先生が女の子たちに必死に声をかけるけど、



そんな言葉も歓声に消えていく。



気が付くと、あたしと優君は、あっという間に、さらに取り囲まれてしまっていた。



「握手してくださいっ!!」



「これにサインお願いします」



そんな中、嫌な顔ひとつしないで、



周りにいる女の子たちに握手をしたり、手を振ってあげたり、



なるべくみんなに応えてあげる優君。



「みんなありがとう。応援よろしくね」



最後にそう言って、あたしの手を取ると、



一気に人ごみの中をかき分けるように学校を出た。