「この子が噂の月魅ちゃんかぁ」



あたしを見て、小声で何か言っている。



「すげぇ可愛いじゃん♪ 頑張れよっ」



「あ、あのさ……彩城さんだよね?? ちょっと、いいかな??」



その中のひとりが、仲間に肩を押されるようにして、あたしの前で立ち止まった。



学年も名前も知らないけど、



何度か見かけたことのあるような気がした。



「急に呼び止めてごめんね」



そう言って照れくさそうに、かき上げた髪は、



染めているのか少し茶色くて、ワックスで無造作に整えた髪。



ルーズに着こなす制服に、嫌味のないさりげない爽やかな笑顔。



日焼けした肌に、笑うと下がる大きな瞳。



その整った顔は、明らかに女受けしそうなタイプに見えた。



「ミナト先輩って……月魅のこと……」



一緒にいた真帆は、なんとなく状況が分かったのか、



「……あたし、先に行ってるね♪」



いつの間にか、自分の教室へ行ってしまった。



その男の子の友だちも、みんなニヤニヤしながら、



「ミナト、頑張れよっ~~♪」



からかうような声援を送りながら、すぐにその場からいなくなった。