高校を卒業して大学生となったあたしも、



この4月で3年生になった。



優君は大学へは行かずに、働く道を選んだ。



理由は、今までかかった多額の医療費。



手術はもちろん、入院、治療費には、当然のようにかかる莫大な費用。



それは優君ママが働いて、働いて、



苦労しながらなんとか用意していた“お金”



少しでもそんなお母さんに返していきたいと思ったから。



「優君、もうすっかり芸能人ね」



ドラマを観終えたママがつぶやいた。



「うん。“注目の若手イケメン俳優”とか言われてる」



正直、優君がここまでになるとは思っていなかった。



“俺、スカウトされちゃってさ、それ、大手の芸能事務所だったんだよね”



最初聞いた時は、優君の冗談かと思った。



その頃、優君が務めていたのは、小さな広告代理店。



高卒のわりにはお給料もよくて、社内でも可愛がられていたみたい。



それでも優君は新しい道を選んだ。



“仕事辞めて、本格的に演技の勉強しようかと思ってる”



真剣に話す表情の優君を見たら、それが冗談ではないことが伝わってきた。