「月魅だって、モテるんだから彼氏作ればいいのに……。もったいないよ」



手鏡で髪を気にしながら、真帆がつぶやく。



「ん?? あたし?? 別に興味ないもん。そんなの」



考えてみたら、中学の時はもちろん、



高校に入学してからもあたしに彼氏がいたことがないんだよね。



でもそんなの気にしたこともない。



彼氏がいなくたって、毎日いくらだって楽しく過ごせるから。



だって、あたしの周りを見てると、



恋愛って悩んだり、苦しんだり、



なんだかそういうのって、自分には合わない気がするんだよね。



とにかく恋愛そのものに興味がないのかな。



「月魅に告られたら、ほとんどの男は喜ぶのに、ホントにもったいない……」



「だから、興味ないもん。好きだとか、嫌いだとか、付き合うとかさ」



「恋しないなんて損してるよ、月魅は……」



「そんなの必要ない!! 恋なんかしなくても毎日楽しいし♪」



自転車を置いて、真帆と一緒に校舎に入っていくと、



「来たぜっ」



なんだか視線を感じるような気がして、辺りを見渡した。



「おっ、あの子だろ??」



「そうだよ、ほらっ、来たっ」



「えっ……マジかよ……俺、こんなの初めてで、緊張しまくりなんだけど……」



やっぱり何人の男の子がチラチラとこっちを見ていて、



何やら小声で話しながら、近寄ってきた。