言いたいことは沢山あるはずなのに、



優星を目の前に、何も言い出せないあたしに、



ママが、じれったそうに、



「ほら、何のために来たのよ。月魅、優君にお別れのご挨拶しなさいよ」



後ろから指であたしの肩を何度もつついた。



「月ちゃん、来てくれたんだね!! ありがとう」



優星の大きな瞳に、あたしが映る。



だけど、あたしはしばらくの間、



そんな優星から視線を外し、



ただ黙ったままその場に立っていることしかできずにいた。



分かってる……あたしにだって分かってた。



優星が本当に引っ越ししてしまうこと。



だからこそ、今、ここに来たのだから。



そして、“さよなら”を言わなきゃいけないことも。



全部、全部分かっていたはずなのに、



いざこうして現実を叩きつけられると、



どうしたらいいのか戸惑ってしまって、言葉が見つからなかったんだ。



それくらい、あたしはまだ幼くて、



初めてのこの感情をどう伝えればいいのか分からなかった。