「月魅、何してるの？　早くしなさい。優君をお見送りに行くわよ」



優星の引っ越し当日は、朝からよく晴れた日曜日だった。



「ママっ、ちょっと待って！！　今、行くから」



慌てて、準備をして、バタバタと玄関へと駆け込むと、



もうコートを着て、あたしを待つママ。



「さぁ、急がないと、間に合わないわ」



家を出て見上げた空は、



まるで、鮮明な青い絵の具を塗ったかのように綺麗だった。



こんな日に、いつもみたいに優星の家に遊びに行くのなら、



どんなに気分が明るくなれるのだろう。



今日という日が、優星とのお別れの日だと思うと、



なんだか胸の奥がズキズキと痛くなるようだった。



ママに連れられて、急いで優星の家に向かうと、



大きな引っ越しのトラックが荷物を運び終えるところだった。



「よかった。なんとか間に合って……」



そう言ったママの視線の先には、



引っ越しのトラックを見送る、忙しそうな優星のママがいた。



「早川さんっ！！　おはよう」



ママが声をかけると、優星のママはすぐに気づいてくれた。



「あら、彩城さん！！　月ちゃんも来てくれたの？？　ありがとう」



「忙しい時にごめんなさいね。もう作業は終わりそう？？」



「荷物が意外と多かったけど、でも、これで終わり。月ちゃんが来てくれて、きっと優星も喜ぶわ。今、呼ぶから、ちょっと待ってね」



「優星～～、月ちゃんが来てくれたわよ」



玄関の外から、優星のママが大きな声で呼びかけると、



すぐに階段を一気にバタバタと駆け降りる音がした。



「月ちゃんっ！！」



玄関の扉から優星が顔を出した。