桐生さんの周りには、いつでも人が賑わっている

無邪気に笑い合っていて、本当に楽しそうだった


「あ、あの~」


勇気を振り絞り、その集団に向かって思い切って声を出してみる

そんな私の声に桐生さんを含めた人達が振り返った

一斉に注目を浴びて、思わず恥ずかしさから顔が赤面するのが分かり、つい俯いてしまった


「何々?
 誰かに告るの?
 ってか、この娘って一年の月城悠璃ちゃんじゃね?」

「マジ?
 うわぁ~、マジで可愛いじゃん
 告るなら俺だろ~」

「いや、俺だね!!」


からかいの言葉が飛び交う中、紙を渡さなきゃって思いながら震える手で鞄の中を漁ってみる


「悠璃ちゃんが用があんのは俺!!」

「はっ?
 何で蓮なんだよ!!」

「悠璃ちゃん‥‥
 蓮なんかやめとけ~
 遊び人だぞ!!」

「おめぇ~ら、うっせ~ぞ!!」


一喝するように言った桐生さん

その声に俯いていた私は顔を上げると、桐生さんが私の前に向かって歩いて来るのが見え、取り出した申込み用紙を咄嗟に差し出した


「教室に来ねぇ~から、サークルに入らねぇ~のかと思ったじゃん!!」


口角を上げて笑みを浮かべた桐生さん

その瞬間、心臓がドキッっと高鳴った


「よ、宜しく‥お、お願いします
 綺羅の‥「了解!!
 ってか、サークルの情報とかメールでやり取りすっから、携番教えてくんねぇ?」

「は、はい!!」


私は慌てて携帯を取り出すと、桐生さんと赤外線通信で連絡先を交換し合ったのだった


「じゃあ、わ、私はこれで‥し、失礼します」

「サンキュな!!」


携帯を掲げ、立ち去ろうとする私に向かって言ってくれた桐生さんに、私はペコリと頭を下げて莉子達の方に向かったのだった


「なぁ~、俺にも悠璃ちゃんの携番教えてくれよ~!!」

「「「「「俺も!!」」」」」

「や~だよ!!」


そんな桐生さんの声を背に、私の心臓はバクバクと可笑しくなるくらい脈を強く打っていた