ササッと何かが来るような音がして、イチイさんの側にドえらい先が尖った槍が刺さる。
「あれを見てまだやるの?」
イチイさんは、まるで「気の毒だ」というように息を吐いた。
「……う…」
苦しそうな顔をして、彼女が倒れこむ。
のを、空木が受け止め、いわゆるお姫様抱っこする。
彼女の腿までありそうな長い緋色の髪は、黒く、肩を少し超すくらいの長さまで短くなり、生えていた赤黒い二本の角は、無くなっていた。
そして黒と赤の焔も、いつの間にか消えていた。
「………彼女は…紅鬼と赤鬼の混血です…」
だから、黒い焔なのだと。
彼は俺に言ったんじゃなくて、イチイさんに言っているようだった。
「彼女は知らないけど」
空木はそう呟いて、自分の腕の中で目を閉じて動かない淋を見た。


