「…なんで……」


俺の中で不安が募り、血の気が引いていくのが分かる。


『匂いがしなかった』


ふと、そんな淋の言葉が頭の中を駈けた。


『近くに人間がいても、何も匂わなかった』


――まさか


そして俺の中で一つの結論が出される。


「!」


それが〝答え〟なのかは分からない。


俺は淋たちが今どこにいるか、目を凝らして探す。


「ちッ」


俺が見つけた時には、すでにその本拠地まであと僅かだった。


舌打ちをした後、すぐにそのことを鴉に伝え、俺は翼を出し、羽ばたく。


空はいつのまにか、俺の不安を煽るように雨曇りになっていた。


もし、俺の予想通りになれば。





――鬼は人間に殺される