『桔梗にしよう』
ふと、彼はそう言った。
――桔梗?
何のことか分からない私は首をかしげる。
『いや…』
そうこうしていうちに、藺草さんの手はボロボロと灰となっていく。
頬に、彼が触れているという感覚が消えていく。
『駄目だね、俺』
悔しそうに彼が言った。
『こんなんじゃ、怒られちゃうね』
なんて、こんな時だって彼は笑う。
『……藺草さんっ』
『大丈夫』
フワリと、彼が微笑む。
『僕は君のなかで生きる』
ザァァっと風が吹く。
『大丈夫だよ、淋』
強い風に目を閉じていると、彼の声が聞こえた。
なのに、私が目を開けると、彼の姿はなかった。
あるのは、彼が着ていた服だけ。
『…っ……ふ、ぅ…』
風が彼を攫ったのだ。
『ぅあぁぁぁああぁあぁぁぁあ!!!』
こんなことになるのなら、やはり私も共に出ていくべきだったのだ。


