――要が死んだ?


嘘だろ?


俺はそんな酷な事実を突き付けられて、動揺していた。


――だって、あの要だぜ?


手合せして、俺が手も足も出なかった……ってことはなかったけど、強い要が?


俺は片膝をついている男を見た。


悔しそうな顔をしていた。


――そんな馬鹿な


「………………」


花桂樹が手を横に振り、男に「下がれ」というジェスチャーをした。


「ぅッッ」


淋は空木に手刀で制され、気を失った。


崩れる前に、空木が片手で淋を支える。


「彼女が鬼の頂点に就くには若すぎたようです」


空木がボソリと言い、米俵を担ぐように軽々と彼女を持った。


「少し頭を冷やすよう、鬼蜘蛛に投獄しときます」


いつもの空木なのに、今は空木じゃないように見えた。


「鬼蜘蛛!!?」


目を見開いている花桂樹が言った。


留置所みたいな場所はほかにもあるらしい。


それを何故その場所ではなく、鬼蜘蛛なのかと、そう言いたげな顔をしていた。


「はい」


空木は彼の目を見ていい、目を伏せている鬼達の方に向き直った。


「結界は雷の五重にします。竜胆なら脱獄しかねません」


そして彼は「ご協力を」と頭を下げた。