「恐らく姐様はここに留まれる」
要は歩きながらそう言う。
「う……紫宛は?」
おっと危ない。
空木って言うところだった。
要はそんな俺を気にもとめる素振りなどはせずに、淡々と言葉を並べる。
「紫苑様は我らの里に」
「……そっか」
「…………あの者たちは…?」
彼が目線をポーン姉さんとイヴァルに移して、また前を向いて言う。
「俺の部下」
「お前に部下?」
要が目を俺に向けて、馬鹿にしたような目線を送る。
「俺、こう見えても近いうちに姐さんみたいな地位に就くんで」
俺は口をへの字にした。
「ほう…」
要がそう言い、一軒の井戸が近くにある家屋の前で止まる。
「ここだ」
淋を抱えた男が入っていった家屋と変わらないくらいの、お世辞にも大きくて生活感のある建物だとは言えない家屋だった。
彼は「姐様が起きられるまでの間だがな」とつけ足し、踵を返す。
「あぁ、」
何かを思い出したように足を止め、俺を見る。
「いつか手合わせ願いたい」
要は妖艶に微笑んで歩いていった。


