紅蓮の鬼




「……げろ…」


ワタシを置いて逃げろと言っても、うまく言えない。


「…かげッ」


何度目かは、分からない。


「ったく、いい加減にしろよッ!!?」


呆れたような表情で、水陰が叫ぶ。


「竜胆は死なれたら困るんだよ、チビ!!!」


こちらに近づいてきている筈の足音がピタリと止んだ。


「……お前が死なねぇんなら、俺はどうなってもいいんだからよ」


彼はそう言って、「よっし、あと少し…」と付け足した。