紅蓮の鬼




「なんだよ~腹が鳴ったくらいでそんなに恥ずかしがることないじゃん」


彼はヘラヘラと笑う。


俯いているワタシの顔はきっと真っ赤だ。


「大丈夫だって、誰にだって腹が空けば鳴るし」


水陰は「気にすんなって」と言い、俯いているワタシの肩に肘を乗せる。


「飛屋久の音なんか雷みたいなもんだったし…」


彼が何かに気づいたように、言う速さを落とす。


不思議に思ってワタシが顔を上げると、水陰は遠くを見ていた。


「……なに、あれ…?」


彼は眉間にシワを寄せ、目を凝らす。


訝しい表情が浮き出ていた。


魚鬼は目が良い。


ワタシの目では捉えられない何かが見えているようだ。


「…………」


スン—…と嗅いでみるが、特に変わった匂いはしない。