紅蓮の鬼





「運悪いな、楓兄(そうにい)」


分かるかもしんねーけど、楓兄は楓太と兄貴を混ぜた呼び方。


そして目の前にいるのは弟。


弟の隣には女が二人。


弟は女二人と両肩を組んで、ガッツリ女の胸を揉んでいる。


「……うわ…………」


流石にこれには俺も引いた。


全力でドン引きした。


だから嫌いなんだよ。


フェロモン撒き散らして、立場をわきまえないとこが。


俺は「…はぁ……」とため息をつく。


淋を見ると、彼女もあからさまに怪訝な顔をしていた。


「で?」


そんな俺と淋の汚い物を見るような目をものともせずに、弟は俺に話を切り出す。


「帰ってきたってことは、腹括ったんだ?」


弟が鋭い目で俺を睨み付けた。


妙に空気が張りつめる。


彼の話はきっとあの事だ。


「さぁね」


「そうじゃないと戻って来ないよな」


彼は鼻で笑って「それともホームシックか」と、クスクスと嫌な笑い方をする。


「……………」


まぁ、この話を淋に話すと馬鹿にされそうだから言わないでおこう。