入ると、あわただしく動くお手伝いさん達が目に入った。 それと同時に、あんまり好きじゃない匂いが俺の鼻を掠める。 ――ちっ 俺は不愉快ゆえに目を細めた。 「淋、」 彼女を引き寄せる。 「俺からあんま離れんなよ」 「楓太?」 彼女は案の定、不思議そうな顔をした。 淋のことだから、大丈夫だとは思うけど心配だ。 「あれ?兄貴?」 ――ほら来た 嫌な匂いの発生源が。