「空木という男に、聞いてみれば何か分かるかもしれん」


里の近くの、色緋の見張りに見つからない場所に着いた時に、淋が言った。


「ありがとうございます」


そう言って彼が行こうとした時、淋が桔梗の名を呼ぶ。


「花言葉、知っているか」


彼女が彼に聞く。


「桔梗の、ですか?」


「あぁ」


彼はかぶりを振った。


「気品、誠実、従順」


淋はフッと微笑む。


「そして、変わらぬ愛」


ザァァと風が吹いた。


「……………」


彼は難しい顔をしていた。


「お前の親は……もしかしたら、幼い時に離れ離れになることが分かっていたのかもしれんな」


「……何故…そう思うんですか」


桔梗が顔をしかめる。


「離れ離れになっても、いつか逢える時が来ても、幼い頃のように我が子を愛す」


もう一度、風が吹いた。


小さな雪と共に。


彼女は「〝生まれなかった方が良かった〟などと言うな」とつけ足して、踵を返す。


「…はい」


彼はお辞儀をして、微笑んだ。