紅蓮の鬼







「淋!」


急に楓太が焦った顔をしてワタシの名を叫ぶ。


そして彼は、ワタシが楓太の背中にくるように手をひいた。


「動くな、秋桐(あきぎり)」


楓太の声ではなく、聞き覚えのある声がした。


何事かと思って楓太の隣に立つと、獣鬼の爪が楓太の目先で止まっていた。


「お久しぶりです、淋様」


声がした方を見ると、黒い着物の上に白い羽織を着ている男がいた。


ワタシと同じくらいの長さの髪、175㎝くらいの背の高さ、優しそうな顔つき。


「そんなしゃべり方は止めろ、イチイ」


ワタシがそう言うと、彼は満足げに笑った。