こんな大食漢のボクを五年近くも育ててくれたショウコちゃん。雨の中、捨てられていたボクをひろって、温かいミルクをくれたんだ。あの味はまだおぼえている。

少ないバイト代のなかで、ボクのエサ代が半分以上しめていることを知ってる。臨時収入があるとホネの形をしたガムを買ってきてくれる。

だからせめて、ストーブの火のいちばんあたるところをゆずってあげる。学校から帰ってくるまで、クッションを暖めておいてあげる。

本当は全力疾走したいけど、それじゃあショウコちゃんがついてこられないから、リズムをあわせてゆっくりと歩く。それがお散歩のしあわせ。

でも、それじゃあぜんぜんたりないんだ。


もしも、ボクに人間の言葉がしゃべることができたなら「ありがとう」って言えるのに……