同じクラスで、弓道部で、数学と英語が得意で、優しくて他の男子より大人っぽくて……
……。
わたしが彼について知っているのはこんなもの。
なんにも知らないのと一緒じゃない。
毎日のようにわたしの眼は彼を追いかけていたけど、彼のこと知りたいって思っていなかった。
わたし恋に恋してただけだ……。
でも、今は違うよ。
知りたいことたくさんあるよ。

どんな食べ物が好きなの?

音楽はなに聴くの?

普段どんな格好しているの?

休みの日は何をしているの?

好きな本は?

映画は?

男の子だけで遊ぶときどんな顔するの?

どんな声で笑うの?

好きなアイドルは?

どんな髪型が好みなの?

好きな子はいるの?

ねぇ……。


ねぇ、ねぇ、ねぇ!!


わたし初めてご飯食べられなかったのよ。
君のせいだよ。
こんなの初めてだよ。
玉子焼き、ほんとに嫌いだっただけなのかな?
甘いの苦手だっただけだよね?

こんな小さなことでもドンドン不安になるよ。

君が何を考えているのか知りたいよ。

君の口から聞きたいよ……。

「聞いてこい!!」

「え、えええ?!」

「当たり前でしょ!本人の口から聞かなきゃ納得できないでしょ」

「そうだけど……」

「美咲!悩んでるだけじゃ何も解決しないよ。何もわからないよ。ご飯が食べられないほど悩んだって、結局それは恋に恋してるのは変わらないんだよ。相手と向き合って気持ちを伝えなきゃ、美咲の恋は始まらないよ」

「颯……」

いつものお調子者とは違う真剣な表情で颯はわたしの背中を押した。
いつもふざけてるけど、わたしよりもずっと大人だ。
本当にいい友達。
てゆーか、恋したことないって嘘だよね。
わたしの想いを伝えてきたら絶対問い詰めてやる!

「もうわたしは手を貸さないからね」

颯はそう言ってニッコリいつもの笑顔で笑った。