柔らかな日差しが降り注ぐ春の昼下がり。
新しい友達の颯と中庭でお弁当を広げながら、わたしは溜め息混じりに呟いた。

「恋……したかもしれない」

あまりの唐突さにあたふたとお弁当の蓋を落としそうになる颯。
眼をパチクリさせながらわたしを見る。
わたしはチラッと颯の顔をのぞいて、もう一度大きな溜め息をついた。

「な……なによ?」

「んーん、べっつにー」

颯にはまだわかんないかー。恋する乙女の気持ちは。
いつも一緒にいる優羽?だっけ。その子のこと好きなのか問い詰めても、颯は笑って家族みたいなものだからって言ってた。
好きだったら、あんな顔であんなことサラッと言えないよね。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべている颯を余所に、わたしはお弁当に手をつける。色とりどりに盛り付けられた可愛いお弁当はわたしの手作り。
小学生のころから続けている料理はちょっとわたしの自慢。
唯一胸を張れるもの。
形の綺麗な玉子焼きをお箸で掴んで、パクッと口に放り込む。
うん、おいしっ♪

「まったく、美咲は悩んでても食欲は旺盛なのね」

「もー、うるさいなぁー」

そう言って笑いあう。
ごはんがおいしいって幸せ!
悩んでても一緒に笑ってくれる友達がいるって幸せ!
恋をしているから……だけじゃない。
でもきっと、恋している幸せのおかげで普段の幸せが何倍にも感じられる。

わたしは今日も笑って過ごす。