海斗が私に「陽愛が好きだ」と告げてから、1週間が経った。

あの日以来、私は海斗と会話をしていない。


今日も会話をしないまま一日が終わろうとしていた。

が。


「未瑠、ちょっといい?」

海斗が私を手招きして呼んでいる。
私は海斗の方へ行った。



―屋上階段

「何?」

私は海斗と視線をできるだけ合わせないようにしながら言った。


「あんさ・・・、協力して欲しいことがあんだけど・・・」


(どうせ、陽愛のことでしょ?)


「・・・陽愛のことだったら、嫌だよ」


こんな言葉、嫉妬にしか聞こえないけど。

バレバレだと思うけど。



それでもいい。

少しでも海斗が陽愛に告白して、振られる可能性が高くなるなら。



「そっか、ん。
 まぁ人に頼っちゃダメだよな」


急に諦めたような風に言った。

ホッとしたのも束の間だった。




「俺さ、今日陽愛に告るんだ」




ニッ、と笑顔を私に向けた。


「振られるか、振られないかは分かんないけど・・・
 見ててくれよ!

 俺の、世界一カッコイイとこ!」


そう言った海斗は、ほんとにかっこよくて・・・

あんな顔を陽愛にも向けるのかと思うと、心が痛くなった。


「ん・・・頑張ってね・・・!」


本音とは逆の言葉を口にして、私は教室に戻った。



頑張って欲しくない。
陽愛に告白して欲しくない。


でも、海斗の気持ちは海斗が決めるから・・・
私はただ見守ることしかできない。

祈るだけ。




―・・・

そして海斗が後から教えてくれた、告白する場所。

人の告白シーンを見るのもどうかと思うけど、今はそんなことどうでもいい。
私は草陰に隠れていた。



「海斗くん、どうしたの?」

陽愛が聞く。

「陽愛、あんさ・・・」


顔真っ赤にしながら言う海斗。


「俺、陽愛のこと好きなんだ。
 付き合ってください」


「え・・・・」


相当驚いている陽愛。

『No』って言って!!




「ごめんね、あたし、好きな人いるんだ・・・」

頭を下げた陽愛。

「うん。そっか!
 じゃあそいつとうまくいくといいな!
 頑張れよ!」


「ごめんね海斗くん・・・!
 ありがとう・・・っ」

陽愛は校舎の方へ走り出した。


そうすると、その場にしゃがみ込んだ海斗。


「未瑠」


ヽ(;゚д゚)ノ ビクッ!!


私は草陰から出て行った。


「カッコ悪いとこ見せちゃったな~」


「海斗、諦めるの?」


「仕方ねぇじゃん、好きなヤツいるっていうし。
 それにさー・・・」

空を見上げながら海斗は言葉を続けた。



「好きな人が幸せになって欲しいって思うから!」



あ―・・・


そうだった。


忘れてた。



私は海斗の不幸せを願ってたんだ・・・


(罪悪感・・・)



「海斗」


「ん?」


「私、海斗のことがずっと好きだった・・・!
 陽愛の代わりだと思ってもいいから!
 私のこと好きじゃなくていいから!」


「私と付き合って・・・!」


私は海斗に、99%不可能な願いを告げた。


私は海斗を利用したんだ。


海斗はきっと断らない。