「おじゃましまーす」

そう言い、家の中に入る。
リビングからパタパタと足音が聞こえる。

「未瑠ちゃん!
 ひさしぶり~」

「桃葉ちゃん!
 こんにちは!」

リビングから登場したのは、海斗のお姉さんの桃葉ちゃんだった。


「あれ、もしかして、そうゆう関係・・・?」

桃葉ちゃんはニヤニヤしながら私と海斗を見ている。


私と海斗は顔を見合わせた。



「「違う違う違う!!!」」



(うゎ、ハモっちゃったよ!!)


海斗をチラリと見ると、耳まで真っ赤。


「えー、そうなのー?
 つまんないなぁー」

q( ゚д゚)pブーブーブー、と桃葉ちゃんは言ったが、海斗になだめられ(?)リビングに戻っていった。



  そんなこんなで海斗の部屋へ


「海斗の部屋久しぶりー!」

そう言って、いろいろ物色をする。

「あんま見んなよ!」

引き出しを開けようとした瞬間、海斗がいった。


シーンとする部屋。


「俺、飲み物持ってくる。
 準備しとけよ!」

「うん」

テーブルの横に座った時、何かが手に当たった。



「何コレ、写真・・・?」


それは、私と海斗、陽愛、正樹が写った写真だった。


壁には小さい頃私と撮った写真や、正樹と撮った写真が貼ってあるのに、それだけは大事にしている。


さらに追い討ちをかけるように、私は見つけてしまった。



『○月○日 陽愛、正樹、未瑠と。
 陽愛と初めての写真!』



苦しい。

痛い。


なんで?

陽愛だけ、特別みたいじゃん・・・


涙で視界がぼやけてきた。

そうすると、海斗が戻ってきた。


「泣いてんの? 
 目赤いよ?」

「違うよ!ゴミが入っただけ!」

私は慌てて目をこすった。

パシっと海斗が私の腕をつかんだ。


「こすったらダメだろ。
 ほら。目薬さしてあげるから。
 上向いて」

お兄ちゃんみたいに言う海斗。

私は目をきつく閉じ、上を向いた。


そしたら、海斗が顎をクイっと持ち上げ、目開けて、と言った。

(ドキドキする・・・!)



   パタ


「ん、いーよ」

「あっ、りがと・・」


(ドキドキした・・・・!!!)

「未瑠、顔赤いよ?
 まぁ、大丈夫か。
 じゃあはじめるぞ!」

「うん」



少し落ち着いて、さっきのことを思い出してみる。


海斗にもし彼女ができたら、あんなことするのかな?

目薬さしたまま、キスとか海斗ならしそう。


私の傍から、いなくなっちゃうのかな?


嫌だよ。



「ねぇ、海斗って好きな人いる?」


(いないって、言ってほしいな・・・)


「・・・いるよ」


いるんだ。


「誰・・・?」


(どうか、陽愛じゃありませんように)







「・・・・・陽愛、だよ」





え―・・・・





「応援よろしくな!」


やだ。


やだよ。


    「やだ!」


言葉にしてから、ハッとした。

困った顔で私を見る、海斗。


「ごめ・・・ちょっと、トイレ行ってくる!」


その視線がいたたまれなくて、私は部屋を飛び出した。


「―・・・っ―・・」

涙が零れ落ちる。


海斗。


嫌だよ。


行かないで。