ピンポーン♪

数秒たって、ドアが開く。

「めっちゃ待ったんだけど!!」

半笑い&半怒り(?)で正樹が出迎えてくれた。


「俺の部屋、2回の1番右だから」

正樹に言われた部屋に入ると、もうすでに陽愛は来ていた。
そりゃそうだけど。

もう時刻は3時半を回ろうとしている。


「んじゃぁ、はじめるかー」

いそいそと勉強道具を取り出し、早速問題に取り掛かる。



( ̄- ̄) シーン…




シャーペンの音と、ページをめくる音しか聞こえない。



「・・・・・・」


ぷぷぷ


「ふゎーっはっは!!!」

みんなが一斉に驚いた顔で私を見る。


「な・・・なんで笑ってんだよ?!」

「だ、だって・・・こんな静かだしさっ・・・
 なんか面白くて・・・」


最初はポカンとしていた陽愛も、私につられてきたのか、くすくすと笑い出した。


「意味分かんねぇよ!!」

という正樹の顔も笑っている。


「もー、さいこー!
 おもしろすぎっ!!!」

「1人でウケてっしw」


楽しい勉強会になりそうな予感(*´∀`*)


「これ何ー?」

「数学得意な人ー!!!
 挙手っっ!」

なーんて声が飛び交う中、私は地味にワークを進めていた。


(疲れたなー)


少し飽きてきて、ペン回しを始める。

顔を上げると、海斗もペンを回している。


(あっ、海斗もだ)

なんて笑みを浮かべながら海斗の視線の先を何気なく追うと・・・


問題集。


だったんだけど。


隣には何かを教えている陽愛がいた。


2人の距離が、近い。


時折顔を見合わせて笑っている。


   チクッ


あ、まただ。

なんでだろ、海斗が女の子と話してるのを見ると、この気持ちになる。


もやもやして、痛い。


さっき消えたのに、また出てきちゃった。



―悲しい予感。


神様、どうか、海斗が陽愛を好きになりませんように。




そんなことを思っていると、肩をちょんちょん、とつつかれた。


横を向くと、正樹がノートの端を指差している。


そこには、

『どうした?
 ボーッとしてるぞー
 もしかして、ヤキモチ?笑』


あれ、わかりやすかったかな?
ていうか、私のこと、見ててくれてたんだ・・・


私は、正樹のノートの端に返事を書いた。

『そんなことないよ(*`ε´*)ノ彡☆
 正樹こそ、陽愛のことみちゃってさ!
 ヤキモチですかぁ~??』


フンッとして正樹を見ると、なんとお顔が真っ赤っか。

(なーんだ。そういうことか)


私は、気まずくならないためだけのモノ。

2人は、‘陽愛’と勉強するために、私を利用したんだ。



そんなことを考えていると、どんどんこの場にいたくなくなってくる。



逃げたい。


「ごめん!」


私は立ち上がった。

「用事、あったの・・・忘れてて。
 ごめん、帰るね」


みんなの声も聞かず、部屋を出た。


「おじゃましました!!!」



玄関を飛び出すと、走り出した。



息を切らしてついたところは、いつか海斗と来た公園。


(あの時も、この空をみたっけ)


涙が、1滴こぼれ落ちた。


もう私たちは子供じゃない。

昨日まで、私は海斗の隣にいたけど、明日はどうかわからない。


いつか、海斗の隣にいるのが、私じゃなくなるのかな?


「嫌だよ・・・」


行かないで。


海斗。