‘カレカノ’になったあの日から、一応楽しく毎日を過ごしている。

―が。


海斗は時々、遠くを見ているような目をしている。



まだ、陽愛への想いを消せてないのかもしれないけど、それでもいいんだ。

海斗の隣にいられるなら・・・



「かーいとっ!
 今日一緒に帰らない?」


リュックを担いで私は、海斗の席に駆け寄った。


「え?あ、ん。
 いーよ」


(またぼーっとしてる・・・)



「行こっ!」


私がそう言うと、海斗はいつもの笑顔をみせ、席を立った。




「未瑠と帰んの久々だなー」

公園を通りすぎたとき、海斗が言った。


「ん。だね~」


そう返事をして、海斗の方を向いた。
その姿は横になく、海斗は立ち止まってまっすぐ前を見ていた。



「海斗・・・?」


私も振り向いて前を見ると―・・・



(陽愛・・・!?)



目に映ったのは、陽愛と正樹が手を繋いで歩いている姿。


陽愛はすごく楽しそうに笑っていて、可愛かった。


「海斗・・・」


陽愛は海斗の好きな人。
陽愛が一緒にいるのは、海斗の親友の正樹。


(どうしよ、なんて声かければいいの・・・?!)


なんて悩んでいると、海斗が口を開いた。



「あの、陽愛の顔さ、俺が一番好きな顔なんだ。
 俺の代わりに正樹があの顔にしてくれたから、俺も嬉しいし!」



ニカッと笑顔を作る海斗。


その姿がとても悲しそうで、痛そうで、苦しそうで―・・・








気がついたら、海斗を抱きしめていた。







「未・・・瑠・・・?」


「海斗っ・・・!
 私、海斗が辛い気持ちになったら、私が海斗の半分背負うから・・・!
 無理して笑わないでよ・・・!」



話している間に、目に涙が溜まってきた。


「未瑠・・・サンキュな」


海斗がそう言った瞬間、涙が零れた。



「俺が泣かせたんだよな?
 ホント、ごめんな・・・」


「ううん、海斗のせいじゃないよ」


私がそう答えると、ホッとしたように笑う海斗。



こんなことがあったばかりなのに、私は酷い質問をした。



「海斗」


「ん?」




「私のこと好き・・・?」



「え・・・」




海斗は『嫌い』とは言わないだろう。

なんていうの?




「うん、好きだよ」



(え・・・・!?)



「陽愛は・・・?」


「さっきはちょっと驚いて、さ。
 相手がしかも、正樹だったしな」



「ほんとにほんとに好き?」


信じられない。


信じられないよ。




「うん、好きだよ―・・・」



海斗は笑った。



そして私の手を取り、手にキスをした。



この時の私は単純で。



信じてしまったんだ。




これが、海斗のついた優しい優しい『嘘』だと気づかずに・・・・



私と海斗の気持ちが一つになることは、一生こないまま?