病院での、あの日。

俺はラルを強く抱き締めた――…。


「ラル…っ。」

消えないで欲しい、そう願いながら。


「サクト…先輩…。」

目の前の彼女が俺の名前を呼んでくれる

それだけでその時は

馬鹿みたいに安心した。


だが、その後。

ラルはか細い声で俺に言った。


「……先、輩。あたし…あたしは…っ。

やっぱり…バスケは、

出来…ないで、す…。」


「………は…?」

今、ラルは何を言った?


「あたしは…っ、バスケをやっては…

駄目、なんですよ…っ。」

待て。待ってくれ。


ラルの言っていることの、

理解が出来なかった。


「……ラル?落ち着け。

急にどうした?怖い夢でも見たのか?」

俺はラルをしきりに抱き締める。

絶対に、離れないように。