「あーあ。辞めちゃったのかぁ…。」


「うん…。」

辞めた。

辞めないと、向き合えない気がした。


「辞めちゃいました。」

…あの、硬く閉じる瞼と。


「……ラルが決めたことだし、

変に意見するつもりはないけど…。」

ミツは、何だかんだ言って

あたしの考えを尊重してくれる。


「………けど。

前も言ったけどね、あたし。

ラルには、正直に生きて欲しいよ。」


「…うん。前も言ってたね。」

夏の、合宿の時。

サクト先輩への想いを自覚した時。


「"生きて欲しい"って…

あたし等高校生にとっては

重い言葉かもしれないけどさ。」

ミツは目を伏せ気味にして話す。

長い睫毛が影を作っていた。


「今も前も…ラルは、

何だか無理してるように見えて…。

こっちが切なくなるよ。」


「…ご、ごめん。」

思わず謝った。


「謝んなくて良いからさ。

覚えといて欲しいってこと。」

再びあたしに視線を向けたミツの顔は

眉がハの字に垂れ下がっていて…

切なさげな表情をしていると思った。


《キーンコーンカーンコーン》


「…予鈴、鳴ったね。

教室に戻ろう、ラル。」


《ギシッ》

ミツは立ち上がって

校舎に向かって歩いて行った。


その背中も切なく見えて…。

ミツをあんな風な表情や雰囲気をする

原因が、あたしにあるのかと思うと…

どうしようもなく申し訳なく感じた。