「……コレ、お願いします。」 ラルの顔は唇以外は一切動かなかった。 唇が動くと同時に、 ラルの右肩がスッと動いた。 《カサッ…》 わずかに机の上に響いた乾燥した音。 ふと下を見ると、 店でよく見る茶封筒が置かれていた。 「………じゃあ。」 《タンッ…タンッ…》 呆然とする俺を余所に、 ラルはまた来たときと同じように 上履きで床を鳴らした。 「失礼しました。」 そしてまた、俺の前から姿を消した。