sideルシファー
「…こんにちは」
娘が気絶した後、そいつは音も無く現れた。
「……今更、現れおって」
「アハハッ、私の前では猫被んないください、クソじじぃ」
「クソじじぃなどでは無いわ。今わしの前にしてるのは、この小娘じゃ」
「…はあ。演技が上手い事」
闇に染まったような容姿のそいつは、光のような一瞬の速さで小娘に近付いた。
「な…」
「…綺麗な顔立ちですね、さすがアジアの国の子。しかも、お兄さんとそっくり。…食べちゃいたい、性的な意味で」
「コイツに近付くな」
わしは小娘を抱えて、後ろに下がった。
「…ケチ」
だが、そいつはまだ遊び足りないのか、小娘をまたもや一瞬のうちに魔法で自分の足元に寝かせた。
当然、わしの腕には重みが一切無く、クスクス笑うそいつを睨んだ。
「なにをする気だ」
「やだ、ちょっと悪戯をするだけですよ。私、この子が少し気に入らないんです。たとえ、あの人の妹であろうが、似てようが…あの人の唯一愛する一人の女なのですから」
「待て、血の繋がった兄弟だぞ!!」
「…だから??」
ヒンヤリとした殺気が部屋に漂った。
「…アイツに怒られるぞ」
「大丈夫、私の望みが叶えられるのなら、怒られたって本望です。これは…」

