夏が終わる。(仮)

「明日帰るの止めるよ、ね、どこか行こう!」


フォークをテーブルの上に置いて、衝動的にチーフの両手を握った。


「…ちょ、ちょっと近いってば!!」


さっきよりも近距離になり、目が合うと顔を背ける仕草が可愛くて思わず抱きしめたくなったけれど、仕事場だから止めておこう。


せっかくの明日の予定を台無しにもしたくないし。


去年、アルバイトに来なければ…

チーフとは出会う事もなかっただろうし、運命も変わっていた。


上から目線でも、年上でも、喧嘩しても…

気遣いが上手で、見かけはキツそうな美人なのに照れると可愛くて…

やっぱりチーフが良いや。


仕事が忙しくて、お祭りや花火なんて二の次だったけど…

レストランが一足先に秋を運んで来たけれども…

まだもう少しだけ、夏を楽しみたい。


二人の夏はまだ終わらない―――……