「これで、覚えてくれた?」

本日2回目の平手打ち。

「わ、私、男…!」

震えながら出た言葉は、言い訳のような、自分を落ち着かせる呪-まじな-いのようなもの。

「知ってるよ、そんなこと」

悪びれもしないエアリスを後目に、エーミールは走り出してしまった。

アイシャは一瞥だけして、すぐ後ろを追い掛けた。

「…覗き見なんて、良い趣味してるね、兄さん」

「お互い様だろ?」

「ははっ、気付いてたんだ」

2人は互いに心を許せない、他人より他人らしい兄弟だ。

「久しぶりに本気、出しちゃおっかな」