「………じゃあさ、アヤメには

自分の居場所があるってこと?」


「………え…。」


「おかしいよね。

アヤメは自分の居場所を持っているのに

なんであんなどしゃ降りの中。

傘も差さずに1人で

あんな所に居たの?」


「………っ…それは…。」

痛いとこを突かれた。


「ねぇ、アヤメ。」


「……………何?」


「この世界は、どんな世界だっけ。」


「……どんな、世界…?」

この世界。

あたしから見た、この世界は…。


「『不必要、という存在がある

  時の流れには逆らえない

  残酷で、色の無い世界』?」


「………あっ…。」

どうしよう。

言い返せない。


だってそれは、

あたし自身がラルに言った言葉。


「アヤメ。知ってる?

不必要なんて、何1つ無いんだよ。」

あたしを真っ直ぐに見つめる、

ラルの澄んだ

ダークブラウンの瞳が怖かった。


「それを、知らないってことはさ。

自分が、

アヤメがアヤメ自身を不必要だと

思ってるからなんじゃない?」


「……っ……。」

もう、言わないで。