〔side綾芽〕

温かい。

心地いい。

ここは、どこなの?


「―――…。」

うっすら目を開ける。


良い匂いのする部屋。

………本気でここどこ。


《ガチャッ》


「あ、起きた。」

ドアが開いたと思えば、

ひょこっとラルが顔を覗かせた。


「え、マジで!?」

その後ろからライ…君も。


「大丈夫かよ、つばきぃ。

急に倒れたからびくった。」


「え、あ…。」

ここまで運んでくれたんだろうか。

ものすごく申し訳ない。


「良いよつばき。

気にしないで。ライだし。」


「はぁっ!?ちょっ、おま、ラルッ!?

俺の扱い酷くねえか!?」


「日常茶飯事。

つばき。体は?平気?」

"つばき"。そう呼ばれても

いまいちしっくりこない。


この時、何故か悲しくなった。

言わなきゃ。そう思った。

あたしの名前を。言わなきゃ。


呼んで、ほしいと思った。