「やだ。体もこんなに冷やしちゃって。

タオル持ってくるから、

ちゃんと体拭きなさい?」


「あれ。お母さんあたしの言ったこと

ちゃんと聞いてた?」


「え?あぁ、良いわよ?

だから早く体拭きなさい。」


「あ、俺タオル持ってくるー。」


「あらライ。ありがとう。」

なんで?


ふわり、柔らかいタオルが

あたしの頭にかかる。


「なんでこんなに…優しく…。」

優しくしてくれるの。


あたし、赤の他人だよ?

初対面なんだよ?

名前さえちゃんと教えてないんだよ?


おかしいよ。

なんでこんなに優しいの。


「……つばき。」

ラルに呼ばれた。

違う。それは名前じゃない。

あたしの名前は―――。


その言葉を告げる前に、

あたしは意識を手放した。