「…あ、カナホさん。」

"カナホさん"。

その人を呼ぶマリは、幸せそうだった。


「そろそろ出るわよ。

飛行機に乗り遅れちゃう。」


「うん。でも待って?

アヤメに、ちゃんと挨拶したい。」

そうカナホさんに言ったマリは、

何やらかしこまった表情で

あたしの方を向いた。


「アヤメ。」

あぁ、ホントにお別れなんだなと

馬鹿なあたしは今さら気づく。


「……ん。」


「ありがとう。」


「…………っ。」

涙が流れた。


「あたしの側に居てくれて。

あたしの親友になってくれて。

あたしの家族になってくれて。」

それ以上、言わないで。

お願い。時間。止まって。


「本当に、ありがとう。」

時間は、止まらない。