――小学校6年生の頃。
「ねぇアヤメー!聞いたー?」
「え?何を??」
あたしに話掛けてきたのは、
当時、同じ施設で暮らしていた
一番の友達のマリだ。
「やっぱ聞いてないか…。
あのね、コウ君施設から出るって。」
「えっ?」
コウ君。それはあたし達が
施設で一緒に暮らしていた
1つ上の男の子だ。
優しくて、頼りがいがあって。
皆が本当の兄のように慕っていた。
もちろん、当時のあたしも。
「なんで?」
正直、とても嫌だった。
コウ君のことは大好きだったから。
家族として。兄として。
「なんかね、養子として
引き取りたいって人が居るんだって。」
養子として…?
それってつまり…。
「新しい家族が出来たってこと?」
「まぁ…そうなるね。」