〔side朔杜〕

………。


『………………ライ…っ。』

ドアの内側から聞こえる、悲痛な声。


俺は、ラルの病室の前で

何も出来ずに佇んでいる。


こんなに悲しげな声は、

あの春の広場以来だったから。


表情は見えないけれど、

今にも泣きそうな顔をしているのだろう。

いや、既に泣いているのかもしれない。


自身の兄を独り悲しく呼ぶその声は

彼女の胸の内を表しているかのような、

そんな声色(こわいろ)だった。