「……ラルに何が有ったのか、

多分ソレは誰も知らないんだ。」

哀しげな表情を浮かべる椿。


その表情は、時たま見せるラルの表情に

重なる一面があった。


「…でも。」


「………?」

椿は続ける。

まだ、話してないことがあるのか?


「……多分、ライ君は知ってるんだろうなぁ。」

ライ君…?


「ライ…って、ラルの兄貴か?」


「ん。」

短い返事をする椿。


「「……。」」

再び流れる沈黙。


ライ…。ライ…。

確かに橘羅伊は聞いたことがあるが…。

引っ掛かるな。


「あっ…。」

俺が考え込んでいると、

俺達以外に誰もいない小さな広場に

椿の声が響いた。


「ヤバッ。今日仕事有るの忘れてたし。

じゃあ…あたしはもう帰るから。

……………じゃあな。」

そう言うと椿は、持っていたボールを

俺に軽くパスして

早足で広場を後にした。