新しいクラスに慣れた頃、瑞月ちゃんには彼氏ができた。 一歳年上で同じ水泳部の沢原先輩。 沢原先輩は泳ぐのは決して速くないけれど、明るく周りを気遣える性格で私たち後輩は一目置いている存在だった。 「沢原先輩、すごく優しいの。こないだもね…」 頬を少し火照らせながら笑みを浮かべて話す瑞月ちゃんはとても可愛かった。 「幸せなんだね。」 不意にわたしの口から零れた言葉は、まるで自分が不幸せだと言っているようで違和感を覚えた。 「夏実は幸せじゃないの?」 案の定目を丸くした瑞月が聞いてくる。