金田くんと話すだけで心臓の動きが早くなるのが分かった。
わたしに笑顔を向けてくれるだけで、心があったかくなる。
「今日一緒に帰ろーぜ。」
彼の照れながらぶっきらぼうに誘うままに部活帰りにわざわざ遠回りして一緒に帰るわたし達
は、ただただ横に並んで歩くだけだったけれど、とても幸せだった。
金田くんとの帰りの待ち合わせは、いつも運動場の片隅のあのウォータークーラーの横だった。
「ここだと、おれの気持ち忘れないだろ?」
金田くんのあまり大きくない背や、小麦色どころか真っ黒に日に焼けた肌、足の筋肉、朝の寝
癖、くしゃっと目が無くなるくらい笑う笑顔を見たりすると、「ああ、この人とずっといたいなあ」と思えた。
時々テレビや好きな食べ物の話で小さな口げんかはしたけれど、大きなもめ事もなく、わたし達は平和な日々過ごした。
