すずらんとナイフ



昼時を過ぎたラウンジは、もうすっかり落ち着いていた。


矢崎と史歩には午前11時から昼休憩に入ってもらい、すずは午後2時から一人で休憩に入った。

すでに2時で矢崎はあがり、今は史歩が一人でラウンジで待機していた。


(…そうだ)

さっき、矢崎が帰りしなに控え室に来て、すずにシルバーのペーパーバックを手渡した。


『これ、一応、ウエディングのヘッドドレスのつもりで作ったんです。
コサージュにもなるんですよ。
下手で恥ずかしいんですけど、良かったら使って下さいね』


開けてみよう、とすずは思い、ロッカールームに向かった。

史歩がひょっこり控え室に現れ、矢崎からのプレゼントを見られるのが嫌だった。


ロッカールームには誰もいなかった。

部屋の中央に置かれたテーブルの上にペーパーバックを置き、白い箱を取り出す。


「うわあ!」


薄紙をよけ、中から現れたものを見た途端、すずは歓声をあげた。