すずらんとナイフ



週があけた月曜日。

月曜日はたいてい来場者が少ない。
来場者リストには数えるほどの客しか載っていなかった。


今日、コンパニオンはすずと史歩と専門学生の矢崎の三人だ。

最近、この取り合せが多かった。

矢崎は、いつも時間ギリギリに来る。


すずは、ラウンジに来る前に一階の総合受付に寄り、クリーニング済みのテーブルクロスの束を持ってきた。


ラウンジに入ると一人で早速、テーブルクロスの点検を始める。


「おはよう!すず」


史歩が出勤してきた。

ラウンジ中程でテーブルクロスの交換をしているすずに声を掛けてきた。


「おはよう」

「ねえ、私」

史歩は笑顔ですずに近づくと、
嬉しそうに小声で言った。


「金曜日、一緒に飲んだ人で眼鏡掛けてた人、いたでしょう?」

「うん」

「私、あの人とあれからホテル行っちゃった!」

「……」


すずは固まった。


彼らとは8時半位まで一緒に飲み、駅で解散したはずだった。


(嘘お…ワンナイトラブっていうこと?)

そんな言葉は、あの野暮ったいスーツを着た男には似つかわしくないように思えた。


(そのための超ミニなわけね…)